無力だ。

学童で、子どもに真剣に向き合ったら、
カッとなったその子にマフラーで首を絞められた。
息が出来なくて苦しくて頭もクラクラして、怖くて悲しくて泣きたくなった。
だけどその子も泣いていて、
私が倒れたらこの子が傷つくと思ってふんばった。
「苦しいよ。首を絞めたら、人は苦しいねん。」
しっかりと目を見て言ったら、
泣きながら、マフラーをゆるめていった。
張り倒す前にゆるめてくれて、良かった。

叩かれたら痛いし、罵声を浴びせられたらつらい。
ツバを吐きかけられたら腹が立つし、首を絞められたら苦しい。
そういうことを、何度も何度も伝えてきたけど、
それでもまだコントロールが難しい。

行為を叱って、その子を好きでいたいのに、うまく叱れない。



あの子も必死なんだと思う。
このままじゃ自分が負けちゃう、やられちゃうと思ったら、
なりふりかまわず相手をやつけたくなるんだろう。


小学生のとき、姉と喧嘩して、
口や力じゃ絶対勝てないから、私は姉に包丁を向けたことがある。
刺すつもりじゃなくて、いつもやられてるからどうしても悔しくて、負けたくなかった。
母は「それは絶対にしちゃいけないこと」だと私にじっくり言って聞かせた。
あのときは、ほんとに必死で、なんとか負けないようにしたかったのだ。


きっとあの子も、必死だった。
攻撃することは肯定できないけど、
そんな必死な気持ちを受け止めてあげなくちゃいけないのに。
私はその後、ショックで笑顔をうまく作れなかった。
多分、「ちょっとびびった」顔をしてしまったと思う。



彼の家についたとたん、張り詰めていたものが切れて、号泣だった。
苦しくて、悲しくて、悔しくて、怖くて。
私はあの子に何が出来るんだろう。
これからも真剣に向き合うことしか思いつかない。
私のしてることに意味ってあるのかな。

プレイじゃない、日常接してるただの大人に出来ることってなんだろ。